ひぐらしのなく頃に/暇潰し編

前3作とは異なり、住民運動真っ只中に起こった誘拐事件をめぐる物語。
外伝的というか、エピソード0というか。
祟殺し編」と「暇潰し編」あたりから、全体的に巧くなっているような気がした。
ただの慣れかもしれない。こちらの慣れと、書き手としての慣れ、両方。
秀逸だと思ったのが、終盤主人公が、電話線が切られているのに気づく場面。
ここはじつにスリリングな展開で、巧く作られていた。
何がいいかって、結局何も起こらないというところだ。
惨劇の予感を受け手に与えながらも、結局何も起こさずにシーンを収束させ、その後で落とす。巧妙だと思った。常套手段といえば常套手段だが、ベタは必要だ。特にホラーでは。
何かとんでもないようなことが起こる予感を抱かせておき、その緊張感を持続させる。これはなかなか難しい。
この「暇潰し編」では電話線切断を発見し、他の電話機を探すが全て使用不能、やがて村人の宴会に招かれ、病院に戻る、この一連の行動が終わり、翌日を迎えるまで、緊張感が途切れない。
最初の二つは電話線切断、もう一つは受話器のコード切断というのも何だかグロテスクで、妙な空気を作っている。
とにかく何か、決定的に事態を悪化させるようなことが起こる気配を受け手に与えることに成功している。
例えばOVAの「呪怨」だ。柳ユーレイが押し入れの奥を探ろうとするとき、視聴者は「いやいや、もうやめて逃げろよ」と考えるだろう。取り返しのつかない事態が起こるだろうと予測するからだ。
もちろんぼくが勝手に思っているだけなのかもしれないのだけれど、とにかくいやなことなのだ。それゆれにいいと思ってしまうのだけれど。
暇潰し編」はこの場面だけで、ぼくにとっては有意義なものだった。
結末は愚だ。ぼくにはメタ構造を取り入れようとする意図が全く読み取れなかった。
一気に安っぽくなってしまったような印象だけが残った。