日本の戯曲

 清水邦夫の戯曲集が何と文庫で出版された。こんな喜ばしいことはなく、さっそく買ってきたのだった。

 収録作は以下の通り。

  • 署名人
  • ぼくらは生れ変わった木の葉のように
  • 楽屋

 今月三軒茶屋のシアタートラムで上演された現代能楽集の「鵺/NUE」で引用され、シアターコクーンでは蜷川幸雄演出で「タンゴ 冬の終わりに」が上演されている。そして来月に上演されるさいたまゴールドシアターの中間発表の演目に「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」が選ばれた。「鵺/NUE」を除いて、観に行けないのが残念なのだった。
 清水邦夫の戯曲にある猥雑なエネルギーとロマンティックな詩情、暴力性というのは独特のもので、それが大好きなのだ。これを気に、いろいろな人に読まれてほしいなと思う。
 ただ、「戯曲読むのはちょっと」と思う方もいるかもしれない。だがちょっと待って欲しい。以下の文章はこの本の帯に記載されたものだ。これに目を通せば、少しくらいは読みたい気持ちが起こるかもしれない。

反抗があり、諦念がある。希望があり、希望以前に絶望がある。出ていきたいのに、出ていけないのだ、と告げている。その告げかたが、まるごとエネルギーの乱射だった。言葉の、乱射だった
古川日出男(作家)

 どうだ、少しは読みたくなっただろう。ぼくが古川日出男が書く台詞にかっこよさを感じるのは、どこかこの清水邦夫唐十郎を思わせる、アングラの匂いをかいでいるからなのかもしれない。古川日出男による解説はなかなかおもしろかった。
 ところで、清水邦夫の戯曲の場合、読むというか、声を発したくなるんだよね。野田秀樹とか唐十郎の戯曲を読んでいるときといっしょだ。こんなおれの中にも、アングラの血が少しだけ、ほんのちょびっとだけでも流れていてくれればいいなと思った。