人知れず消えてしまっていったものどもへ。

 昔、感銘を受けたホラー映画を観直そうという極めて個人的な企画は、ソフトがなかなか見つからないという理由で早くも挫折気味です。
 多くはぼくが中学生か高校生の頃に近所のレンタルビデオで借りるか、VHSを買って観たものなのです。エロビデオ屋の入口にカモフラージュで普通にビデオが置いてある場合があるじゃないですか。そこでたまにホラー映画やカルト映画のVHSを二束三文で売られているのを買っては観ていた。100円とかで買ってた気がする。だからすぐ捨てちゃってたんだけど、クローネンバーグの「ステレオ」とかアルジェントの「歓びの毒牙」とかは大学に入る頃くらいまでは持ってた。
 そんなことはどうでもいい。近所のTSUTAYAやGEOにはその頃観たホラー映画のDVDがないのだ。ソフトにはなっているから買おうと思えば買えるんですけど、それをやっていると金がいくらあっても足りないのだった。だからレンタルで済ませたいのだけれど、なかなかままならないものですね。
 それよりも悲しいのは、DVDになっていないものがあるということだ。「クリーン、シェーブン」や「スタンダール・シンドローム」がその例なんですけど。特に「スタンダール・シンドローム」なんてアルジェント監督作なのにね。
 でもそういう映画はきっともっとたくさんあるに違いない。レンタルビデオブームの中で本当にしょうもないものまでリリースされていたしね。モンド系なんかその代表格だと思うんだけど。「ジャンク」とか「デスファイル」とか、DVDにはなっていないでしょ。いや、そういうのはいいんだけどね、ならなくても。でも「スタンダール・シンドローム」はもったいないと思う。
 VHS→DVDの流れの中で、失われてしまった作品群は必ずある。そして次はDVD→ブルーレイの流れの中で淘汰されてしまう作品もあるだろう。ビジネスだから当然なのかもしれないが、そういうしょうもない映画を観て育ったぼくとしては少しさびしい。いや、モンドは別にいいんだけどさ(笑)。
 でも、最近名画座にもよく足を運ぶようになったぼくとしては、ソフト化がなくてもプリントさえ残っていれば、ネガさえ無事なら、いつかまた巡り合うことができるかもしれないと思うようになった。かつて俺に感銘を与えながらもDVD化の波に乗れなかった映画といつかどこかのスクリーンで再会できるかもしれないと考えることはそんなに悪いことじゃないと思う。