突き放すこと。

 黒沢清監督の「トウキョウソナタ」の冒頭で、リストラされる香川照之さんは「あなたにできることは何ですか? 自分で見つけてください」という言葉で突き放される場面があるんですが、やはり黒沢監督の短編「花子さん」で「あなたは誰?」と訊ねる京野ことみさんに対して加瀬亮さんが「それは自分で考えてください」と同じように突き放す場面がある。
 例えば「DOOR 3」、「CURE」、「蛇の道」といった作品で描かれてきたのは導く/導かれるの関係だったんですけど、上の2作ではそれをかなり日常的かつ厳しい形で描いているように思えました。「アカルイミライ」や「ドッペルゲンガー」だと、その形はもうちょっとわかりやすいんですけど。
 上の2作でいえば、特に加瀬さんの方は「いやいや、待ってよ」と思ってしまうくらいの突き放しっぷりで、しかもその後姿を消してしまうというおまけまでついていて、でも思わせぶりで好きな場面なのでした。もちろん「トウキョウソナタ」の方も。
 導く者と導かれる者の関係っていうのは黒沢映画の重要ポイントなんだろうなあ*1。「回路」の役所さんがいちばん端的な存在かもしれない。ああ、思えば「神田川淫乱戦争」でも麻生うさぎさんは少年を導こうとしていたっけ。

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*1:高橋洋さんの脚本自体もそうなのだろうけれど。