真夜中の湾祭り@バウスシアター

 今年、完全に湯浅湾ファンとなってしまっているぼくとしては行かぬわけにもいかないイベントでした。当日の朝、テアトル新宿で「空の境界」のモーニングショーを観た後、すぐ帰宅して夕方まで熟睡して、オールナイトに挑みました。
 春先にあった爆音アルジェントナイトと同じく、昼間しっかり寝ておけば、まだまだオールにも耐えられるんだなとわかった。楽しそうなオールナイトイベントがあったら、これからも参加してみようと思う。といっても、3ヶ月に1度くらいのペースじゃないと辛いかも(笑)。虚弱なのはどうにかしたいんだけどね。
 バウスシアターの受付でチケットを買ったら、先着35名という話だった長島のCD-Rをもらえました。あとおみやげの手ぬぐいも。CD-Rには間に合わないと思っていたので嬉しかった。まだ聞いてないけど。

シェーの果て
サニー
猿に似たおばさん


猿に似たおばさん
豚は悪くない
海辺の女
傷口は傷口でしかない
煙粉
シェーの果て
お前の名前を忘れたい
あの人は何?
色は何色
たまゆら
化石の夜
終わりの季節
柔らかい太陽
気配と木霊

 まずは湯浅湾のライブからスタートだったんですが、セットリストはこんな感じでした。
 場内に入るとリハーサル中。上の3曲はリハでプレイした曲。「今までのことは忘れてください」と一旦はけていく湯浅湾メンバー。ちょっと休憩時間?があって、再び登場してライブ開始。リハ最後の曲と、最初の曲が一緒だというのがこのイベントのゆるりとした空気を現しているような気がしないでもなかった。
 リハのときはえ?と思うくらいバラバラに聞こえたんですが、実際にライブが始まるとやはり演奏はピカイチだなと思いました。バラバラだった音があれだけまとまってくるんだから素晴らしい。
 湯浅さんが足つったりしたり、いろいろハプニングもありましたが、非常に楽しいライブでありました。俺の体力的なあれもあるんですけど、スタンディングじゃなく座席に座って堪能できるというのが良かった。湯浅湾はじっくり演奏を聴きたいバンドでもあるから。"シェーの果て"が好きなんですけど、ライブで聴く度にアレンジがかっこよくなっている気がします。
 ライブはいつも"ミミズ"で終わるんですけど、この日はラストの曲が違っていて、あれ?と思った。その疑問が解消されるまでにはおよそ2時間弱。


 続いて、作家いしいしんじ先生による爆音小説。その場で小説を書きながら朗読するというもので、美術館とかで度々行っているようでした。いしいしんじ先生の本は読んだことありますが、こういうのは初めて拝見するものでした。
 これがおもしろかったねえ。モノホンの作家が目の前で小説を書いているということがまず刺激的だった。しかも白紙に鉛筆でかりかりと書きつけるというアナログさ。すごいなあ。すごいよ。それをショウとして成立させるところも。
 あとプロットはある程度立てておるかもしれませんが、基本的にその場で書いていると思うんですけど、それでもナチュラルに物語のとっかかりを作ってくるところはさすがプロの作家だと思いました。届くはずのなかったレコード盤が届くというところから物語が始まる。単純に巧いなと思いました。


 次は大友良英さんのライブ。実はタイムテーブルに『大友良英と湯浅湾』と書いてあるのを見て、夢のコラボキター!とテンション上がってたので、ようやくこの時間が来た!と思ってた。
 実際は大友良英ソロライブで3曲やって、湯浅湾との演奏はその後でした。ちなみに大友良英ソロは、「色即ぜねれいしょん」のプロモもかねて挿入歌を2曲やり、続けて先日の爆音映画祭のライブでも演奏していた加山良の「教訓1」を演奏してました。ダラダラっとした空気から一気にノイズがぎゅーんとくるところがとにかくかっこいい。
 終わるといよいよ湯浅湾がステージに上がり、一夜限りのコラボ演奏。曲は"ミミズ"でした。
 なるほど、ここで演奏するからやらなかったのね。
 この"ミミズ"の演奏がすさまじいことになっていた。すさまじいというか、どう書いていいのかわからないくらいのもので、音の厚みとか音圧とかいろいろあるんですけど、何か大変な演奏がなされているということに圧倒されていたと思う。なんか泣きそうだったし、向こう側が見えた気がした。
 ぼくは音楽のことについては何もわからないも同然なんですが、ギター×3、ベース、ドラム、ハーモニカでこうも豊かな空間が生まれるものかと感動した。たぶん全然伝わらないと思うんですけど、こればっかりはその場にいた人じゃないとすごさがわからないと思う。とにかく素晴らしかった。大友さんと湯浅湾、あとスタッフの皆さんとかありがとうございましたという感じです。こんな素晴らしい演奏を聴けて、感謝の気持ちしかないです。


 残った時間は爆音レコード鑑賞会(いい音)。湯浅さんといしいしんじさんが楽しそうにレコードをかける姿が印象的。そうそうレス・ポールをかけたときに、湯浅湾のギタリストの牧野さんが音源のすごさを説明をしてくれてました。
 時間が時間だけに意識が飛びそうだったけど、なんとか耐えた。ビートルズの各国盤とかおもしろかったんですけど、俺のハイライトはエルヴィス・プレスリーの"love me tender"でした。染みたー。
 "be my baby"の凶暴さも評判通りのものでした。当時はこういう音だったんだ!と納得していいのかわからないくらい、強烈に響いてきました。なんか撃ち抜かれているみたいだった。すげーよ!
 シド・バレットルー・リードの曲がかかったときは昇天しそうでした。気持ちよすぎ。色んな曲が聴けて楽しかったなー。


 バウスシアターを出る頃にはもう朝になっていて、ああオールナイトイベントなら当然か(笑)、ちょっと清々しかった。これは爆音アルジェントナイトのときも思ったことだけれど。
 音楽ってすげーな、って心の底から思った8月22日→23日でした。