コクーン歌舞伎「東海道四谷怪談」

観てきたのだった。千秋楽。この日のために有給申請。
山手線、湘南新宿ラインの事故の影響で、30分開演を遅らせての上演だった。
それは妥当な判断だと思う。お客さん、心なしか少なかったしな。
芝居の内容自体は以前行ったときと変わっていなかったように思える。
細かい台詞とか動きの変化はあったけれど。
例えば、伊右衛門がお岩様から櫛を奪おうとする場面がカットされていたり。
しかし全体像としてはあまり変わらず、やはり伊右衛門浪宅までが芝居の肝であるという印象のままだった。
秋山最期の場面のお岩様の台詞は「悪に加担の秋山長兵衛、ともに奈落へ連れ行かん」でした。
この場面はやっぱり怖い。


カーテンコールで、来年もコクーン歌舞伎で「東海道四谷怪談」を上演すると話していた。
北番、つまり三角屋敷を出す方を多くしたいとも言っていた。
そしてニューヨークで平成中村座第二回公演として上演するそうだ。
おそらくそれが決定版になるだろうし、逆に言えば、以降はもうずっとやらないのだろうと思う。
ぼくとしては、北と南でわけるのではなく、串田演出の「東海道四谷怪談」の決定版が観たい。
というか、役者がいればできるのだと思うのだけれど。来年の出演者はどうなるんだろうな。
コクーン歌舞伎でも何でもいいのだけれど、しっかり役者を揃えた「通し狂言 東海道四谷怪談」が観たいと思った。


北番といえば、最近読んでいる「鶴屋南北論集」に、以前「東海道四谷怪談」が全段通しで上演された際に、三角屋敷の場の幕切れは屋敷の装置ごと奈落に落ちていくような演出だったそうだ。
今回の北番の幕切れも奈落というのがキーワードになっている。
あの演出はそれを踏まえたものだったのだろうかと何となく思ったのだった。


余談だけれど、地獄宿の場面で変な笑い声を上げながら引っ込む小山三さんに勘三郎が声をかける場面がある。
前観たときは「不思議な生き物だよ」と言って笑いをとっていたが、今日は違っていた。
「おもしろい人だよ。長生きしてもらいたいもんだ」。
千秋楽だから特別だったのだろうか。ちょっと、ほろりときた。