歌舞伎座とザ・スズナリ

 今日は休みだったので、歌舞伎座昼の部と下北沢スズナリで上演されている「密室彼女」を観てきたのだった。
 歌舞伎座はよかった。

  • 江戸の夕映え
  • 雷船頭
  • 外郎売
  • 権三と助十

 演目は上記なのだが、どれもおもしろかった。全体的に楽しめなかった先月に比べると、楽しく観ていられた。やはりぼくは江戸前のスッキリした芸が好きなのかなと思った。上方のコテコテ和事も嫌いじゃないのだけれど。
 江戸弁がじつに耳に心地良いんだ。「権三と助十」における、菊五郎三津五郎の江戸弁なんて、本当に聴いていて、気持ち良かった。若者の間では方言ブームがあるらしいけれど、江戸弁ブームこねえかな。
 そういえば、まだ13歳の尾上右近ことケンスケ君ががんばっていた。幕開きの「江戸の夕映え」では女形、続く「雷船頭」では雷様で、元気な姿を見せていた。ちょっとキレ不足かなとも思ったが、やはり踊りがうまいよね。
 しかし今月昼の部の最大の話題は団十郎復帰の「外郎売」。台詞や下座が聞こえないくらいに盛り上がっていた。劇中口上もあったしな。何がともあれ、復帰はうれしい。お目出度い。


 渋谷でラーメンを食ってから、下北沢へ。貧乏性なのでいつもライス無料のラーメン屋に行くのだが、満腹になってしまってちょっとつらかった。これもいつもなんだよな。少しは学ぶべきだし、胃袋も大きくなるべきなんだ。
 さて下北沢のザ・スズナリで観たのは劇団、本谷有希子の「密室彼女」なのだった。原案・乙一、脚本/演出・本谷有希子というコラボだったのだが、じつに退屈な芝居だった。
 筋立て、道具立て、人物造形、構成、全部において、何だかなあという感じだった。この本谷有希子という人の芝居は、劇団になってからは「石川県伍参市」という芝居からなのだが、実は松尾スズキゼミの卒業公演を観ていているから、多分すごい初期の芝居を観ていることになる。それからの縁なのだけれど、ここ数作は公演を重ねるたびにつまらなくなっている。同じ主題で縮小再生産を繰り返しているような印象しかない。
 眠かったし、早く帰りたかった。ていうか、帰ろうかとも思ったが、混んでいたので、出るに出られなかった。役者は良かった。台本と演出が、あとたぶん原案もダメだったんだろう。演劇的なおもしろさに欠ける舞台だった。
 「石川県伍参市」はおもしろかったんだよな。もっと筆力のある人なんだろう。もっと研ぎ澄まして欲しい。ていうか、この人の過剰な自意識で、チェーホフの「かもめ」あたり演出してみたら、新しい照らし方ができるんじゃないかと思うんだけど。