ホステル

 クエンティン・タランティーノ製作、イーライ・ロス監督の「ホステル」を観てきたのだった。エロとグロのために18禁での公開となっているが、これがまた娯楽の王道をいく映画で、すこぶるおもしろかったのだった。以下、ネタバレ以外の何物でもない。
 話の筋としては、海外旅行でハメを外してオマンコしていた若者たちが地方の町でひどい目にあうというシンプルなものだが、本当に楽しめた。序盤のおっぱい攻勢から後半のグロい拷問という落差がいいし、ブラックユーモア風味の結末もひねくれていていいじゃないか。この不自然なくらいの後味のよさは何だ(笑)。おっぱいと拷問が好きな人は見るがいいよ。
 イーライ・ロスは、「キャビン・フィーバー」でもそうだったのだけれど、70年代、80年代に多く作られたスプラッターが大好きなんだなってことがよくわかる。あとハーシェル・ゴードン・ルイスとかも大好きに違いない。おれも大好きだ。そもそも中学だったが高校だったが忘れたが、ファンゴリアを購読していたおれだ。嫌いなわけがない。最高の映画だったよ。おれがエンタメ好きを自称すると、大谷さんやかきさんにバカにされるが、本当に大好きなんだよ。特に映画はそう。B級映画大好きだからね、おれは。
 で、この「ホステル」はいいB級映画だった。イーライ・ロスだって高尚な映画なんて撮ろうとしていない。その代わりに、観客が何を求めているのかをわかっている。おっぱいだ。序盤のおっぱいは素敵ですね。そういえばこんな台詞があった。

「オッパイ!」

 観ていて思ったのだが、毛唐のおっぱいは本当にけしからんな! 何だあれは。うらやましい。今まで貧乳にしか縁のなかったおれはどうすればいいんだ。
 おっと、話がそれた。「ホステル」だ、グロと上に書いたが、実はそうでもない。ルチオ・フルチの映画の方がよっぽど気持ち悪いし、汚い。この「ホステル」の場合、拷問を受ける場面よりも、拷問器具の上げる音が生理的に嫌な感じを出している。ハサミのジョキンジョキンとかドリルのキューンとかチェーンソーのギュイーンとかだ。実際に人体が破壊される場面よりも手を出される前の方が怖ろしかった。ホラーではないな。ただ「やめてー」という感じだ。怖さっていうのとは別物だと思った。生理的嫌悪なんだろう、たぶん。そして、これを感じるは人としてまっとうなことなんだろう。グロ映像そのものを期待するとちょっとアレかもしれない。ただ、おれにとっては、かなり視覚に訴えかけられた。
 ていうかね、すごい感情移入して観てしまった。例えば「エコール」ときは感情移入なんかしないで、映画自体が淡々としているなら、おれも淡々として観るよ的な態度だったのだが、これは違う、めちゃくちゃ入り込んでいた。拷問部屋からどうにか逃れてからの脱出行になってからは特にそうだ。「早く逃げてー」、「戻らないでー」、「志村! うしろうしろ!」みたいな感じで、もう思わず声を上げてしまいそうだった。こういうのって本当、エンタメの王道だと思うんですよ。ドキドキドキドキしてたからね、おれ。
 俳優陣で印象に残ったのは主人公とロッカールームで対峙した変態を演じた人なのだが、パンフレットを買わなかったので誰なのだからわからない。しかしいい変態だった。あと主人公が時々バルセロナのチャビに見えて仕方なかったので困った。女優陣はおっぱいということでオールOK。ただホステルの受付の女の子が脱がなかったのは残念だ。かわいかったのに。
 ということで、大満足の映画だった。三池崇史がちょこっとだけ出演しているのだが、身体が三池崇史そのもので笑いそうになった。「殺し屋1」を監督した三池崇史が拷問映画に出ているってだけで何か笑えますよね。
 そうそう、一つ感心したのは、子供の使い方だ。例えば、スティーブン・キングの小説を読んでもわかることなのだけれど、ホラーにおいて子供の使い方っていうのはそれなりにベタで、ここはホラー映画のフォーマットを崩さなかったところだろう。この映画の後味を良くしている点の一つだと、ぼくは思う。