阿部和重

 やっと読み終わったのだった。読んでいる間ずっと違和感があって、これは何だろうと思っていたのだけれど、読み終わってやっとわかった。携帯電話向けのコンテンツとして書かれたものだからだ。だから、文章の息がやけに短い。削ぎ落とされているといった方が正確かもしれない。
 大雑把にみると、二部構成になっていて、上京してからの後半部分が圧倒的におもしろい。物語が結末へ向けて激しく動き始めるからだろう。色々と過去の阿部和重を連想させる部分があり、またおもしろおかしい描写もあり、ニヤニヤしてしまった。
 ところが、恐ろしいのは一番最後の部分で、すべてがひっくり返ってしまうのである。「感動」、「純粋」、「奇跡」みたいなものが全部反転する。相変わらず不敵な人だ、阿部和重って人は。

ミステリアスセッティング

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