悪夢探偵

 先日観てきたのだった。

悪夢探偵
ある日、少女と中年サラリーマンの惨殺死体が立て続けに発見される。二人の被害者は自室のベッドの上で何者かに切り刻まれていた。事件を担当するエリート刑事・霧島慶子と同僚の若宮らは被害者が、「0」で表示される謎の人物と最後に電話をしていたことに気付く。やがて事件の鍵が“夢”にあると推測した霧島は、他人の夢の中に入る特殊能力を持つ悪夢探偵こと影沼京一の存在を突き止め、捜査の協力を申し出るが…。
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD9807/index.html

 謎解き的な要素はなくて、ホラー映画っぽかったけれど、塚本晋也監督作の中では比較的ポップというか、エンタメ度が高い。どうしてそう感じたかというとわかりやすかったからだ。けっこう台詞で説明しているところがあって、かなりわかりやすい。
 ホラー的ではあっても、やっぱり塚本映画で、パンフレットを買って、クレジットだけ先に目を通したのだけれど、「ヤツ 塚本晋也」とあって、出たーって感じになった。全体的に、「鉄男Ⅱ」のリメイクとまではいかないのだけれど、似ている感じがした。毎度毎度の監督・脚本・撮影・美術・編集・出演:塚本晋也だし。これだけで嬉しくなっちゃうよ。「鉄男」のときから変わっていないもの。
 映像、カメラワークがいいのはいつものことなのだけれど、特に映像の色使いがよかったですね。特に夢の場面での色の薄さは無人の都市の無機質で冷たい空気感が出ていて最高だった。夢の中ってああいう孤立している感覚があるんだよなあ。特に駐輪場で男がヤツに襲われる場面は怖かった。あと、終盤の畳みかけるようなオーバーラップ、カットバックしまくりのぐりんぐりん映像は最高すぎる。それだけで軽く満足だ。ヤツに追いかけられる場面では映像がグラグラ揺れるので、酔ってしまう人もいるかもしれない。「ヒルコ」でもあったカメラワークですね。
 役者陣はどうだったかというと、まず松田龍平の存在感が抜群にいい。使いにくそうだけど、いい俳優だと思います。色気があるんですよね。足首とか鎖骨のあたりが特に色っぽい。あと台詞もいいですね。口跡がいい。声もいいし。泉鏡花の「夜叉ヶ池」で実際に目の前で観たときは、口跡の良さはあまり感じなかったのだけれど。
 安藤政信のキレ具合も最高だった(笑)。途中までの若い刑事っぷりも良かったけれど。「キッズ・リターン」から何年経ったんだろう。いい俳優になったなあ。
 懸念のhitomiはところどころ台詞を言えてないっぽい場面があって、言えていても棒読みだったりしたのだけれど、それでも違和感なく溶け込めていたのはきっと塚本晋也があてがきをしたからだろう。もう一つは塚本映画の場合は上手い下手よりも身体の存在感が必要とされる(気がする)ので、それなりにハマっていたように思える。上手いか下手かと問われれば、下手糞と言わざるをえないけれども。
 そして監督本人ですが、やっぱり塚本晋也自身が出ているとこっちも身構えてしまう。相変わらずいい声しているし。洗脳されそうだよ(笑)。野田芝居に野田秀樹が必要なように、塚本映画には塚本晋也が必要だ。どんなチョイ役であっても。
 まとめるとおもしろく観られた映画ということだ。だが、かなりグロい描写もあるので注意が必要だ。グロOKなら観て損はないはず。
 最後に、フジファブリックのエンディング曲がかっこよかったので、タワレコかアマゾンで買おうと思ったら、売ってなかった。何てことだ。映画館のロビーで売ってなかった時にいやな感じがしたんですけどね。店舗でならまだ売っているのかなあ。1万枚限定らしいから無理か。残念だ。