舞城王太郎

 「メフィスト」に掲載されている、舞城王太郎の「東京戦争」を読んだ。冒頭部分ながら、おもしろかった。続きが読みたくて仕方ないよ、ちくしょう。
 それにしてもこのメフィスト、1500円だったのだけれど、舞城王太郎しか読まないのはもったいない。ぼくはミステリ読みではないのだけれど、適当に読んでいこうかなと思った。昔、ヴァン・ダインとかカーとかのミステリを読んでいた頃の気持ちを思い出せるのだろうか。
 以下ネタバレ。
 舞城王太郎の「東京戦争」は長い小説の冒頭部分といった按配で、これだけでは評価は下せぬのではないかとも思うが、いかにも舞城らしい魅力で満ち溢れていて、これだけで1500円とは言えないけれど、900円くらいの価値はあった。いい青春小説になりそうだ。
 読んでいて思ったのは、舞城はミステリが大好きなんだろうなってこと。以下、引用してみる。スティーブン・キングの小説を読んだ後、ミステリを、というか、綾辻行人の小説を読み終えた主人公の述懐。

 ミステリーってホラーよりキツいぞ。
 もう何しろプロットが頑丈も頑丈、たぶん登場人物たちはまったく自由度のないまま《十角館》だの《水車館》だの《迷路館》だの、明らかにろくでもない場所にのこのこ無抵抗に集まってきて段取り通りの殺人事件を迎えて決まった順番に殺され手がかりを発見し後々の推理のために用意された台詞を喋っている。
 うはああ……まったく抵抗の余地がないなと思う。

 これには笑ったね。他にも愛媛川十三 作の「光」が言及されていたり、舞城王太郎流の人間喜劇か!などと思いながら、かなり楽しんで読めた。考えてみれば、スティーブン・キング舞城王太郎の間には固有名詞多用という共通点がありますね。ともにパルプな感じだし。ぼくが舞城を好きなのは、いい意味での安っぽさがあるからなのかなって思った。
 この「東京戦争」はまだ冒頭部分で、これからおもしろくなるも駄作になるも作者の匙加減ひとつだけれど、この冒頭部分を読む限り、いい小説になりそうだと感じた。特に最後の一文にらしさがあって、ぼくは舞城王太郎の小説のそういう感傷的な文章が好きだ。