三島由紀夫賞
「新潮」の今月号に選評が掲載されている。実に読み応えがある選評だったと思う。正直何度か吹いた。やっぱりというか何というか、消極的受賞だったのかなって思えた。
(「1000の小説とバックベアード」について)
実際この作者に、例えば吉行淳之介などの評価はできまいと思えるほどに従来の文学に関する素養は乏しい。――筒井康隆
はっきり言っちゃったー! 筒井御大さすがだぜ。
各選考委員は「1000の小説とバックベアード」について、「ダメだけどいい」というような評価を下していて、ダメな部分を指摘した上で受賞させたということは、新潮社の思惑はあるかもしれないが、まだ三島由紀夫賞も捨てたものではないかと思わせるにじゅうぶんだった。
ぼくは「1000の小説とバックベアード」は大っ嫌いなんだけど。
それよりも、本谷有希子の小説への評価を読んで、岸田戯曲賞と同じく、まだ大丈夫だって思えたのだった。
自我に振りまわされる女性をこれでもかとばかり書いていて、それが文芸的だと思い込んでいるのではないか、――筒井康隆
本谷有希子氏の『生きてるだけで、愛。』は以前にも読んでいたが、今回あらためて再読して、もうこのての小説はご勘弁願いたいと思った。――宮本輝
「生きてるだけで、愛。」は自己嫌悪的なナルシシズムに降り回されている女性が主人公で、血肉の通った人物造形がなされている。――高樹のぶ子
話者は自分をエキセントリックだと思いたがっているようだが、雪の日に、マンションの屋上で全裸になって語りあうのはエキセントリックでもなんでもない。頭が悪いだけである。――福田和也
のぶ子(ノ∀`)アチャー
もっとも、この引用も相当わざとらしく印象操作しているのだけれど。でも福田和也はよく言ってくれた。最近の本谷有希子は自分のキャラに溺れていて、ろくなものを書けていないと思う。もう一度「Future is」を書くべきなんだよ。
いしいしんじの「みずうみ」はファンタジー一辺倒じゃなくなったところがいいなと思ったのだけれど、選考委員にはそこがダメだったようですね。でも各々がそれなりに評価しているが印象的。ただ批判しているだけじゃないところが三島賞のやさしさ。なのだろうか。