ラノベ

マージナル (ガガガ文庫)

マージナル (ガガガ文庫)

 このラノベを読んだのだけれど、これが全然おもしろくないというか乗り切れなくて、何でだろうなと地味に考えていた。たぶん、主人公の内面が性格っていうよりも設定の要素が強くて、人間に肉薄する部分が少なかったからだろうか。
 一時期、「セブン」とか「コピーキャット」とか、サイコスリラー的な映画が流行って、その時期にひっそりと公開されたかレンタルのみであったかは忘れたが、「クリーン、シェーブン」という映画があった。ぼくにとっては「セブン」とかよりも、「クリーン、シェーブン」の方が衝撃的で、この映画ほど人を不安にさせる映画はないよなと思ったのだけれど、今回読んだ「マージナル」は境界線上でふらついている人物を描こうとしているのにどうにもこっちに訴えかけてくるところがなくて、それはたぶん上に書いたように性格や心理じゃなくて設定として描いてしまっているからなんだろうって思った。もうちょっと、人間としてのスケッチを見たかった。
 ただ、加倉井という人物だけは良かった。彼がいるだけで救われる部分がある。彼が登場してくると、何だか安心できる。ぼくは評価できるのはたぶんそこだけ。
 それにしても、「クリーン、シェーブン」の未DVD化は惜しいね。出たら買うよ、ぼくは。明日公開の「ゾディアック」がきっかけで、サイコサスペンスブームが起これば、あるいは……。