ラノベ
- 作者: 来楽零,緒方剛志
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/06/10
- メディア: 文庫
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男の家には美しい女の死体があった。けれど男は「彼女は死んでいない」と言い張り──(『クックロビンの埋葬』)
「夜一人で道を歩いていると、頭に袋を被って、手に鉈を持った奴に首を刈られる」友人からそんな都市伝説を聞いた少年は──(『ヘッドハンティング』)
日常の隣に潜む、妖しい物語たち。それらを語るために私たちは集まった。もちろんリアルな話じゃない。それは怪奇小説サイトのオフ会で、ホラー好きの5人が、それぞれ紡いだ物語を披露するという集まりだ。
だけど、彼らの話はあまりに生々しく、やがて現実と虚構は交差(クロス)して……。
これはあなたを異界へ誘う、とても恐い物語。
全部で四篇の短篇とオチのようなショートショートで構成されている。正直、どれも怖くなかった。
- クックロビンの埋葬
これはかなり中途半端というか、何を書こうとしているのかわからなかったのだった。結末のループ構造ありきなんだろうなとは思いましたが。ラブストーリーとしては中途半端だよなあ。
死体の目が開くところ、あと死体が動いているかもしれないというところは良かったと思う。でもそこだけなのだ。怖さはない。
ラブストーリーとして書くのならば死体は腐っているべきだし、その先の妄執まで至っていれば美しい短篇になっていたのではないかと思った。よくわからない小説だった。
これは一番おもしろくなかった。設定に魅力はないし、話の運び方もおもしろいとは思えなかった。生首のある家がただの山小屋っていうのも色気がなくてよくない。そこは古城にすべきだろう、常識的に考えて。
でも何よりダメだと思ったのは『首狩り』の正体、動機みたいなものに迫ろうとしてしまったところだった。トビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスが世界を震撼させたのは、そういった推理のようなものの対象になりえないところにいたからだろう。何か得体の知れないものに襲われる。それだけでよかったのに。
- 子供たちの町
これはいかにも「世にも奇妙な物語」のエピソードとしてありそうだなと思った。映画の「ザ・チャイルド」やキングの「トウモロコシ畑の子供たち」のようでもある。田舎に引っ越してきた(たまたま旅行の途中に立ち寄った)が、実はそこは……というよくある構成。
それなりにおもしろかったけれど、これはむしろブラックコメディに近いのだろうか、怖さはほとんどなかった。不気味ではあったけれど。
子供たちが主人公の家の中に侵入する場面。これが妄想かどうかはともかくも、あまり大きなアクションは起こさなかった方が効果的だったと思うなあ。
- 七不思議の向こうで
一番ホラー的だったのはこの一篇だったと思う。ただスーファミの「学校であった怖い話」のエピソードの二番煎じっぽくもあり、これはいったいどうだろうかとも思った。
終わり方は良かったと思う。永遠に続くかもしれない孤独はそうぞうしただけで嫌だなあ。
まとめ。怖くはないが、つまらなくもなかった。ただ怖くないっていうのはホラーとしては致命的よね。