ホラー
ガガガ文庫。ラノベでホラーというと読む前からなにか残念な感じがするというか、結局ファンタジーやら何やらが混ざってしまうような印象があるんですが、これは正統派のホラー小説でした。良かったです。怖かった。
- 作者: 一肇,わかば
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/11/18
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
キャラクターの過剰さが気になった。神野江ユイの造形が嘘っぽいというか、説得力がない気がした。いちいち動きが派手だし、もうちょっと抑えた方が全体の雰囲気に合っていたと思うんですけどね。一方、主人公はヘタレという特徴があって、特に前半は彼が感じる怖さがかなりダイレクトに伝わってきたのが良かった。等身大で良い。
この小説の問題というか、やっちまったなと思ったのは後半。対象が人間の狂気*1にシフトしてからがどんどん怖くなくなっていって、物語のつじつまを合わせるためだけのものであるように感じられてなんともいけなかった。そこを一人称で書いているのはさらに良くないと思った。主人公がおかしくなっているだけだっていうのはわかりきっているのにしばらく引っ張るのだもの。
思えば、キューブリック版の「シャイニング」も前半はいい雰囲気だったのに後半がダメだった。オーバールックホテルの悪霊、さらにはその土地そのものが忌まわしいというのが怖いところなのに、映画ではジャック・ニコルソンの顔が怖いという方向にシフトしてしまっている。そりゃあ半狂乱のジャック・ニコルソンが斧を片手に襲ってきたら怖いだろうけど、それはちょっと違うだろうと思ってしまう。
最後の締めを読む限り、シリーズ化するんじゃないかと思うんですけど*2、短編連作にすべきだよなと思った。物語としての長さを求めるよりも、この主人公が怪奇なことに巻き込まれていくような短編にした方が効果的なはず。ていうか、そうして欲しい(笑)。
それにしても、彼岸・此岸という言葉や人物の役回りを考えると、この著者はハスミンの「アカルイミライ」論を読んだんじゃないかと思ってしまった。オダギリジョー=主人公、浅野忠信=神野江、藤竜也=ロリ顔巨乳先輩、なんてことを考えたんだけど、違うか。