ラノベ

 勧められたので読んでみました。「PSYCHE」。

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

 最近はっきりしてきたのは、自己の存在が揺らいでいくような小説はあんまり好みじゃなくなってきたなということでした。「幽式」の後半もそこがダメだったし、この小説もどうにも苦手でした。昔はむしろ好きなくらいだったんですけど。
 幼馴染の女の子が実は存在していないってことがわかるところはなかなか読ませるものだったし、けっしてつまらなくはなかったんですよ。ただ正直なところ、この小説から学ぶことはないなっていうのがある(笑)。この小説のナイーブさや危うさは、今ぼくが書こうとしている小説には不要なことだから。
 最近のぼくはわりとおのれの行動に確信を持っているというか、社会的な善悪とは別の、自分の行動原理みたいなのをはっきりと抱えている人物を作る傾向があるように思っています。自分の中に行動や思考の法則が確固としてあるような人。法律とかモラルっていったものはうっちゃってますけど。
 だから、この小説の主人公のように自分が見ているものが現実なのか空想なのか判別できないような人物にあまり興味がないのでした。しかもこの小説は一人称で書かれていて、それはちょっとずるいと思った(笑)。信用できない語り部ってやつなのかな、これが。
 ただこの小説を必要とするような人がいるっていうのはわかる。岩井俊二の映画を必要とする人がいるのと同じように、こういった小説を欲する人はかなり多くいるのだろうと思う。一つの青春小説の形として、この小説は肯定されていいと思います。この壊れやすい感じは、特にラノベをよく読む人にはけっこうツボなんじゃないかと思ったんですけど、そうでもないのかな。
 幽霊描写や幽霊の扱い方には色々言いたいこともありますが、この小説はホラーではなく青春小説であると思うので、むしろこれくらいの方が良かったのかなとも思います、バランス的に。