仮想儀礼

 篠田節子の「仮想儀礼」を読み終えたのだった。

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈下〉

仮想儀礼〈下〉

『仮想儀礼
男二人が金儲けのために始めたネット宗教。しかし、信者の抱える闇は、ビジネスの範疇を超えていた。家族から無視され続けた主婦、愛人としてホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性……居場所を失った女たちが集う教団は、次第に狂気に蝕まれてゆく。圧倒的密度と迫力! 二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。
http://www.shinchosha.co.jp/book/313361/
http://www.shinchosha.co.jp/book/313362/

 特に上巻の出だしなんですが、これは失敗したかも!と思ってしまうくらいに今一つ鋭さのない立ち上がりだったんですが、上巻の終わりからはほとんど一息で読んだといってもおかしくないくらいあっという間でした。読み手を立ち止まらせないくらいに事件が連続するからなのかもしれない。
 ただ出だしはよくないと思うんですよ。だんだんテンションが上がっていきましたけど。例えば東野圭吾の「容疑者Xの献身」は冒頭がとてつもなくすごくて、描くべきこと、省略するべきこと、隠すべきことのバランスが鮮やかだったんですけど、この小説はとにかく二人の男を始め、書かなくちゃいけないこと、説明するべきことが多いので、そのせいで停滞したのかも。種をまく時期をどう退屈させないかってことがむつかしい。
 後半はこれでもかという負の連鎖が続いて、マイナスのご都合主義っていってもいいのかもしれないですけど、転落っぷりが著しかった。主人公たちに悪い印象はないんですけど、爽快なくらいに陰惨になっていく(笑)。本当、マイナスの方向に話が転がり始めてからはあっという間だった。ああ、これが人の不幸は蜜の味ってやつか。。。
 読む側にとっては救いのない結末なんですけど、信者の女たちにとっては救済と希望に満ちた終わり方で、だからこそ余計に後味が悪い。いいぞ、もっとやれ。