ダリオ・アルジェント

 いよいよ「サスペリア・テルザ」が明日封切りということで、魔女三部作の真ん中にあたる「インフェルノ」をDVDで観直したのだった。

 昔、テレビ放送(WOWOWだったかも)を録画して何度も観ていた記憶があるんですが、そのときよりもわけがわからなくなっていた。たぶん昔は華麗な殺しの場面を観るだけで満足していたのだろう。嫌な子どもだ……。
 ストーリーよりも殺しの場面に重点が置かれているからよくわからないことになるのだと思うんです。シーンごとの迫力や凄味は大したものだと思うし、赤と青を強く使った色彩や音響はよくわからないけどすごい。でも全体像を考えるとおや?ということになる。今、自分は何を観ていたんだ?って。
 簡単にストーリーを書いておくと、『三母神』という三人の魔女をめぐる本を手にした人々が次々と殺されていくというもので、主人公が誰であるのかがわかりづらい構成になっていることがこの映画を難しくしているように思えた。というか、主人公なのかなと思われる人が次々と殺されていく展開なのだった。それぞれの殺しの場面にけっこうな時間を割いているから、全体のバランスが悪くなっている。だから、この映画を殺人シーンをつなげただけ、と感じる人が多いのではないかと思った。
 主人公が入れ替わっていくという風にも捉えることができると思うんですけど、そうなるとちょっと繋がりがあまりうまくないかなとも思った。もうちょっと物語、ないしは人物を描き込んでいればわかりやすくて、娯楽性も強くなったかなー、なんて。
 でもこの映画を観終えた後の、「あーアルジェントだったー」という充実感も大したものです。たぶん、ぼくはなんだかんだでこの映画が好きなんだと思う。アルジェント作品をもっとも堪能した気になれるのはこの映画なんじゃないかな。実際、色と音のハッタリは「サスペリア」に劣っていないし、建物内部の迷宮っぷりや地下室にある水たまりのシーンは幻想的。ここら辺、マリオ・バーヴァ大先生が絡んでるという話なんですけど。ちょっと待てよって思う間もなくテンションで押し切られる。つまりアルジェント節。
 有名なホットドッグ屋のオヤジのシーンは何度か観ちゃったんですが、ほんとわけわかんない(笑)。でも好き。あの走ってくるオヤジの有無を言わさない感じ。足場の悪そうなところをけっこう遠くからわりと力入れて走ってきてるんですよね。それが迫力を生んでいるのかな。
 そういえば、ローマの学校の場面で出てくる謎の美女。エンドロールではmusical studentってなっていましたが、もしかして彼女が涙の母なのだろうか。劇中で三母神(ため息の母、暗黒の母、涙の母)の中で一番若くて美しいと言われていたので、なんとなくそう思った。でも魔女はタクシー乗らないか(笑)。