チェイサー

 昨日から封切りの「チェイサー」。今日観てきたんですが、けっこうおもしろかったです。これが長編第一作なのか……。元デカで今はデリヘルの元締めの男が自分のところのデリヘル嬢をさらった連続殺人鬼を追いかけるというストーリーでシンプルなんですけど、映像の力や演出、俳優の存在感等で125分の上映時間をぐいぐい引っ張っていました。(以下ネタバレあり)
 映画の後半、特にいいなと感じたのは追う/追われるの関係がとことん描かれるところでした。片やデリヘルの元締め、片やシリアルキラー。すでに社会的善悪からははみ出してしまっているような人間同士だからなのかなと感じた。逆に警察の動きは後手に回りがちだったり、緩慢だったりする。この差はわかりやすくて効果的だったと思う。デリヘルの元締めの方は段々と変化していくんですが、デリヘル嬢の子どもが手元を離れてからの執念は異様だった。
 終盤、いよいよシリアルキラーの家に辿り着いた元締めが家のチャイムを押そうとしてやめて、持っていた鍵でドアを開けるという流れが特に印象的でした。あの確信っぷりは良かった。
 暴力描写がけっこうあって、これだよ!って思うような場面も多く、そこも良かったと思います。ただ逃げ出したデリヘル嬢が金づちで殴られるところは、特別なことはしないで淡々とやった方が良かったのではないかと思った。直前の殺人が描かれず、死体を映すことで省略されているからこそ、なおさら。家に招き入れた二人を襲うところは抜群だったと思う。
 俳優陣は主役のお二方はもちろん、デリヘルの女性、警察、商店のおばさんや子役の女の子も皆良かったと思う。主役の元締め役の人は顔がふっくらとしていて、最初はちょっとどうかと思ったんですが、どんどん鋭さが増していくんですよね。役者だなあ。