読んだ本、2冊

 いろいろ読んではいるんですが、感想どころか読んだ本リストも書くことができない。気持ち的に。俺が飲み込めていればそれでいいとか、そんな状態。読んだ本と読んでない本と読むのをやめた本(例えば「愛情の運命」。映画はおもしろかったのに!)が床にどんどん積まれていくのだった。
 でもたまにはちょこっとしたものを書いてみようかと思い立った。最近読み終えた2冊。

凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)

 世界的なクライマーである山野井泰史とその妻妙子の、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンへの挑戦を描いたノンフィクション。
 めちゃくちゃおもしろかったです。端的、かつ痺れるような文体がまず素晴らしいし、描かれる過酷な登山行と山野井夫妻の生き様には感動しないわけがなかった。文章はシンプルなんですけど、たまにロマンティックな描写があって、そのさじ加減が絶妙だった。
 何よりも良かったのは山野井夫妻の描かれ方で、どこか妄執を感じされるようになっていたように思える。基本的にはシャイで人前に出たがらない、穏やかな人として描かれているんですけど、特に奥さんの妙子さんにはそんな感じが強く出ていたんですが、山に関してだけは異形とも言えるくらいの執念を持った人として描かれていたように思えます。
 もちろん執念だけで山に登るわけではなくて、経験、理論、勘、そして信頼といったようなものが二人の助けになっていて、それを沢木さんの端的な文章が正確に射抜いている。そこが本当に素晴らしい。フィクションとかノンフィクションとか関係なく、単純に優れた読み物だと思いました。
 ただ、この読み物をしっかりと支えているものは文体でも知識でもなく、山野井夫妻への尊敬や畏怖みたいなものなのかなとも思った。それは「テロルの決算」を読んだときにも感じたことですが。
 ともあれ、素晴らしい読み物でした。
七夕ペンタゴンは恋にむかない (ガガガ文庫 い 1-3)

七夕ペンタゴンは恋にむかない (ガガガ文庫 い 1-3)

 一方、久しぶりにひどいと思った小説がこれ。何で買っちゃったんだろう(笑)。
 ひどいというか、ぼくがただ登場人物はある程度は成熟していないといけないと思っているだけなのかもしれないのだけれど、この小説の登場人物全般に納得しづらい部分があってきつかった。全体の構成とか描写のバランスも良くないと思う。
 ぼくもうまくはできていないのだけれど、人物に刻まれた論理やルール、そして原理っていうのを書く側が正確に把握していないといけないんだろうなと最近はよく考えます。これはうまくできていないと思う。いや、あるにはあるんだけど、幼稚すぎてね受け入れがたかった。感情移入の問題なんだけど。
 『殺し屋は殺す』の原理をもっとしっかり考えていこう。娯楽小説を生みだすために。