ぴあフィルムフェスティバル

 6作観たので、その感想でも書こうかと思った。他にも観たいのはいくつもあったんですが、観られたのは以下の映画だけ。

  • 青春墓場〜問答無用〜
  • ぴゅーりたん
  • Souda Kyouto He Ikou
  • 恋愛革命
  • シュナイダー
  • chain

『青春墓場〜問答無用〜』
 これはチラシのあらすじを読んで、「こんな感じかな」と思った通りの映画だったというか、わりと普通のバイオレンス映画でした。監督は深作欣二作品の大ファンらしく東映アクションっぽさがありながらも、最近のスプラッター、例えば「ホステル」とかの影響もありそうな感じ。物語が転がり始めるところは、日常の中の暴力というものを描こうとしているのかなとも感じた。
 まあまあおもしろかったです。手放しで褒められないのは、いいのかこれで?と思ってしまったこと。どこかでうまくまとめようとしているというか。
 もちろん制作規模の違いがあるのであれなんですけど、昔の東映アクションはこの映画以上に無茶苦茶だったよなとしみじみ思ってしまったのでした。渡瀬恒彦がスタントなしでカーアクションやってるあの無茶苦茶な感じを出せれば、監督の望む世界が撮れるかな、なんて思った。別にカーアクションをやれとは言うわけではないけれど、もっと無茶苦茶やってくれと思った。


『ぴゅーりたん』
 男女の劇としてまとまりを見せそうになる一方で、謎の殺し屋組織みたいなのが出てきたり、電話越しに展開するばかりで画面には現れない色模様がぽんと出てくる変な映画。物語のメインの筋となる恋物語のところは落ち着きがあって悪くなかったです。せりふが何気ない感じなのもいい。
 ただこの映画の沸点は映画のほとんど冒頭の、バス停の近くに捨てられてるソファーに女が寝ているというショットだったかもしれないです。あのカットは良かったなあ。


『Souda Kyouto He Ikou』
 これは申し訳ないんですけど、映画のノリについていけませんでした……。笑えるし、ちょっと感動もできるし、そういうのはいいんですけど、観たときのぼくはこの映画を欲していなかった。という感じです。
 一番最後に出てきた京都のお友達のリアクションがナチュラルで、そこはおもしろかった。


『恋愛革命』
 今回観た中で一番ひどいと思ったのがこれ。シナリオも演出も冴えがなかったように思えるんですが、そんなことよりも女優さんの衣装が、これはないなと思った原因。劇中でもこもことしたスニーカーを履かせているんですけど、その色気のなさにがっくしきた。
 そのせいかどうかわからんところですが、男がどうしてこの女に執着するのかよくわからなかった。女優に魅力がないのか、撮り方に問題があるのか。「ダークナイト」でいやいやマギー・ギレンホールはないだろ……と思っちゃったのと似ているかもしれない(笑)。


『シュナイダー』
 これはかなり重く、しかも結論の出ないような主題を取り扱っていて、出来はともかくもその覚悟は評価されるべきだろうと思った。ただ真っ向から描くだけの材料がなかったのか、抽象的な要素を強くしていたけれど。
 ある犯罪の被害者遺族と加害者がいて、その対峙を描いた作品。最終的に加害者は被害者の気持ちを知るために、被害者の遺族によって、理不尽な暴力を加えられることになるんですが、やはり眼目は暴力シーンだと思います。暴力シーンはかなり唐突に始まるので、正直びくんってなった(笑)。ここ、「Helpless」の影響がありそう。
 暴力を振るう側の人間がその行動を説明しながらことを行うというのはあまり効果的でなかったように思えました。びっくりはするけど、どんびきするほどではなかった。不快感よりも、え、マジでやっちゃうの?感が強かった。俳優の演技が妙に軽くて良かったからかも。最後の場面は、わりと予定調和的に終わってしまった気がする。
 どういう結末を提示するのかというのは、主題を考えると本当に難しいことなんですけど、やっぱり映画なのでどこかぼくは娯楽性を求めちゃってるんだろうな。スパッと切っちゃっても良かったと思うんだけど。いや、でも救いのなさを出すためにはこれで正解だったのかもしれない。
 舞台となる場所の中で、主人公の女性の部屋だけが妙に生々しくて浮いていたように感じました。定食屋に客がいないとか、そういうことで変な雰囲気を出そうとしていたと監督は仰っていたんですが、そこだけ生活感溢れる感じでなんか画面がたくましかった。


『chain』
 今回観た作品の中では唯一の16mm。コンペ部門に出品されたものではこれと「夢の島」が16mmで、あとはDV作品。
 これが一番良かったなあ。単純に、登場人物の心情がうまく描かれていたように思えます。せりふではなく、映像で見せることができていたと思うし。劇中何度か出てくる歩道橋が印象的。歩道橋好きなんだよね(笑)。
 登場人物の生活が交錯するような序盤の語り口はちょっとどうかと思ったけど、シナリオも素直にラストの暴力シーンにつながっていく感じで、その行動の理由は安直だし、なんら特権性を感じるものではなかったんですけども、それも当世ってことで。主人公の一人である女子高生がめった刺しにされるんですが、血まみれの美少女は映画の華だよなと改めて思った。ここ、唇の色がしっかり紫色になっていて、芸が細かい(笑)。
 学校襲撃の場面、特に逃げる女子高生たちを追って切りつけるところの描き方は「サイコ」を参照しているのかな。その後、排水口に血が流れ込むというカットもあったから、たぶんそうだと思うんですけど。そうそう、前述の女子高生めった刺しの場面では、他に一人その子の友達が個室に隠れているんですけど、その個室の下の隙間から血が流れ込んでくるという描写は凄味がありました。その子はそっちを見ていないから、リアクションをとることはないんですけど(笑)。ぎょっとしました。
 女子高生側のドラマは小ぢんまりとしながらも、なかなか悪くなかったです。おのおのの自宅の照明設計もわかりやすく、その差を映し出していたし。思春期の鬱屈とした空気感が出ていて良かったな。歩道橋で顔を合わせるシーンの微妙さなんて抜群だったんじゃないかと思う。その分他のところまで手を回せずに、ちょっと紋切り型になってしまっている気がしないでもないですが。