カタコト

 最近、かたことの日本語がやたらと耳に残っていて、それが何かと言うとリチャード・ギアの「ハチィ!」と「あんにょん由美香」製作のきっかけとなった韓国のエロVシネ「東京の人妻 純子」で韓国人の俳優さんが言う「スキナンダロ!」なんですけど、思い出してはくすっと笑ってしまいそうになる。
 リチャード・ギアの方は映画自体を観ていないので、本編内だとじつはわりと普通だったりするのかしらとも思いますけど、「東京の人妻 純子」の方は何回聞いても笑ってしまう。俳優さんがシリアスにやっているから余計におかしい。

 今この予告編を見ても笑っちゃう。ぜひリチャード・ギアにも「スキナンダロ!」という台詞を言ってもらいたい。
 それはともかく「あんにょん由美香」は大変良い映画でした。ぼくがピンク映画を見始めたのは最近の話で、林由美香さんの仕事のほんの一部分すらも観ていないと思うし、ほとんど何も知らないに等しいくらいだと思うんですけど、でもその僕が見たわずかな映画の中でほぼ例外なくはっきりと存在していた林由美香は、彼女の死後に撮られたこのドキュメンタリーの中にもやっぱりとはっきりと存在してたように感じました。それは極めて映画的な手つきだと思うし、この約2時間のドキュメンタリーがなにか結実してるってことだと思う。
 林由美香さんは脇役で出てても主役を食っちゃうくらいの華というかなんというか、安直に言えば存在感がある女優さんなんですけど、でもふっといなくなってしまうようなどこか空虚な魅力もあるように思える。今回の「あんにょん由美香」をめぐる特集上映で上映された「スッチー菜々子の玉の輿大作戦!」と「最新!!性風俗ドキュメント」はそれぞれそこが強く出てたかなあ。もちろん堂々主演の「たまもの」、「誕生日」も素晴らしかったですけど。
 そうそう「あんにょん由美香」のテーマ曲は川本真琴さんによる朴直な歌で、林由美香さんがいない現在が映されるこの映画の音として、すごく似合っていると感じた。サントラ買いそうになっちゃった。買わなかったけど。で、代わりにいまおかしんじさんのシナリオ集を買っちゃったりして。
 以下ネタバレ。
 悲惨というかかわいそうというか、それはないだろうと思ったのは「東京の人妻 純子」に出演したことで俳優生命を断たれた韓国の俳優さんのこと。エロVシネに出た人はオーディションに行っても書類で落とされて実技を見てもらえないらしく、身体で食ってる人が身体を見てもらえないというのはひどいなあと感じた。かたことの日本語はあれだけど、そんなに悪い俳優じゃないと思うし。
 こういうエピソードが入るから、カットされたラストシーンが撮影されるこのドキュメンタリーの結末がことさら良く映るんだろうなあ。なんて。