歌舞伎

 昨日と一昨日、歌舞伎座新橋演舞場で歌舞伎を観た。これで歌舞伎座の昼の部・夜の部、新橋演舞場の昼の部・夜の部を全部観たことになる。大変だよ、観る方は。体力的に昼夜通しで観るのは無理だからな。腰痛くなるし。

  • 吃又
  • 保名
  • 藤娘
  • 黒手組曲輪達引

 上が歌舞伎座、夜の部。

  • ひと夜
  • 寿式三番叟
  • 夏祭浪花鑑

 上が新橋演舞場、昼の部。
 まず特筆すべきなのが「寿式三番叟」だ。何で幕開きじゃねえんだよって思ったが、まあいいってことよ。すごすぎだ。染五郎亀治郎の身体のキレですね。表現できねえよ。動く動く。強烈なリズム感で、思わずいっしょに身体を動かしたくなりますね。下座も華やか。いい舞踊だった。
 ついで、「吃又」だ。三津五郎がよかった。等身大なんだよな、この人の場合。吉右衛門でも観たことがあるけれど、やはり全然違う。悲劇性というか、行き場のなさみたいなものが三津五郎の「吃又」の方が強い気がした。時蔵のおとくもよかった。出過ぎなくらいがちょうどいいのだろうな。
 そして「夏祭浪花鑑」。これは中村勘三郎平成中村座ニューヨーク公演で出した演目だから、何気なくテレビで観た人も多いのかもしれない。あの、ニューヨーク市警が入ってきて「フリーズ!」って言う、あれ。もっとも、こちらは古典として、オーソドックスな演出。だから、テンポはゆったり。もう少し上げてもいいと思った。というか、2時間に収めて欲しかった。吉右衛門演じる団七九郎兵衛の、二幕目の引っ込み。ここがじつに綺麗だった。これ観るだけでもいいんだよな、たぶん。団七九郎兵衛が舅の義平次を殺して、夏祭の、神輿の行列にまぎれる場面があるのだけれど、ここは串田演出の方が鮮やかだと思った。こっちの方が錦絵的、串田演出は映像的なのかな。
 「黒手組」はほとんどコントだからどうでもいい。いや、よくはねえか。序幕、矢ガモの着ぐるみは出るわ、下座は「恋のダウンロード」を演奏して歌うわ、自由過ぎだ。(笑) 嫌いじゃないけど。序幕引っ込みの飛び六法は吹いた。(笑) マジでやるのかと思った。二幕目以降はオーソドックスな「助六」のパロディーになっていた。まあ、普通。大詰めの立ち回りはさすが菊五郎劇団。ここはよかったなあ。
 歌舞伎座の舞踊二つ、「保名」と「藤娘」。若い菊之助海老蔵だけに、やはり厳しいものがあった。特に「保名」だが、菊之助は健康的過ぎるんだよね。物狂いの雰囲気じゃなかったかな。海老蔵は、うーん、どうだろう。必死で女形っぽくしているようで大変そうだったなあ。
 問題は「ひと夜」だ。今まで観てきた中で、といっても三年くらいだけれど、一番つまらなかった出し物だった。新歌舞伎は当たり外れが多い気がする。来月の歌舞伎座の「荒川の佐吉」は大当たりなんだけど。何がつまらないって、ただでさえ薄い物語が一向に動かないというところだ。1時間弱かけてやる芝居じゃねえだろ。下座がねえのは何でなんだろう。寝るに寝られない。下座があると気持ちよくなって寝られるんだけど。これは歌舞伎じゃないだろって思った、さすがに。