三島由紀夫賞

 三島由紀夫賞の、過去の落選作から二つピックアップしてみる。

  • 宮沢章夫 「サーチエンジン・システムクラッシュ」*1
    • 劇作家・宮沢章夫の中篇小説。芥川賞候補にもなったんじゃなかったかな。このリアリティは何だ! と最初に読んだとき感じた。手つきというか目線というか、執拗なんだよなあ。物語的なものは何もないといってもいいのかもしれない。ゆったりと視界が崩れる、それが心地良かった。ただ、「ユーモア不条理小説」ではないと思うけれど。
  • 舞城王太郎熊の場所*2
    • 表題作は三島由紀夫賞落選作。しかしなかなかおもしろい小説ではある。やっぱこの人の問題点は主題の露骨さなんだろうけど。ただ、これは短編集で、三本目の「ピコーン!」が傑作なのだった。青春小説の傑作だと思う。おもしろいのは、この「熊の場所」の選評だ。宮本輝はちゃんと評価したうえで、ダメだと言っている。宮本輝を「読めてない」とバカにする人がいるけれど、意外とそうでもないんだよね。

*1:

サーチエンジン・システムクラッシュ (文春文庫)

サーチエンジン・システムクラッシュ (文春文庫)

*2:

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)