ディセント

 映画を観てきたのだった。「ディセント」。シネセゾン渋谷。
 ネタバレあり。

 デビュー作「ドッグ・ソルジャー」で注目を集めたイギリスの新鋭ニール・マーシャル監督の長編第2作目。女性だけの探検隊が地図もない洞窟に閉じ込められ、闇の中で出口を求めて迷走、やがて尋常ならざる恐怖に支配されていくさまを描く。
 冒険好きのサラは、一年前の交通事故で愛する夫と娘を失ったショックからいまだ立ち直れずにいた。そんな彼女を励まそうと、友人たちが冒険旅行に誘う。リーダーのジュノが企画したのはアメリカのアパラチア山脈奥地の地下洞窟探検。参加したのはサラとジュノを含め女性ばかりの6人。ロープを伝って穴の中へと降りていく一行。最初は順調だったが、突然の崩落事故で出口をふさがれてしまう。さらに悪いことに、功名心にはやるジュノは皆に内緒で前人未踏の洞窟を選んでいたのだった。地図もなく、捜索隊も期待できないことを知った彼女たちは、別の出口を見つけるため迷路の中を進んでいくのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=324246

 「CUBE」とか「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」とか「SAW」などと比べられていて、変わった手法を使った映画なのかと思っていたのだけれど、これがまっとうなホラーだった。結構正統派。筋書きとしては上記の通りなのだが、後半クリーチャーが出現して、完全にアクションホラーになる。
 中盤までの閉塞感たっぷりのサバイバル劇はなかなか緊迫感があってよく、後半の化け物との戦いっぷりも見応えのあるものだった。問題は、それぞれがバラバラになってしまっていることで、全体の統一感に欠けるんだよな、この映画。主役のサラの心の傷というのもたびたび描写されるが、上手い具合に消化されているようには思えなかった。
 あと、全体的に安っぽい。崩落の場面がやたら貧乏臭く見えてしまったのは気のせいだろうか。それでも、約100分の間、それなりに楽しめた。全体の安っぽさは否めないが、カメラが動きまくるので飽きさせない。シナリオの甘さを演出で補っている感じ。力技か。観客を退屈させないためにカメラを動かし続けろと言ったのはロジャー・コーマンだったか。
 クリーチャーの動きを見ていると、やはり「サイレントヒル」のクリーチャーはいい感じにキモかったなあと再確認した。ダンスの動きを取り入れるっていうのはいいアイデアだ。群舞っぽかったし。逆にこの「ディセント」のクリーチャーは地底で独自の進化を遂げた元人間で、猿みたいな感じ。なんか普通。しかも微妙に弱い。数が多いのがあれなのだけれど、終盤、サラとジュノは普通に素手で戦ってたし。このパーティーアンジェリーナ・ジョリーとかミラ・ジョヴォヴィッチとかがいたら、余裕で生還していたんじゃないかと思ってしまった。
 この映画は怖いというよりもびっくりするようなもので、こけおどし的な場面がほとんど。しばらく引きずるような怖さはない。やっぱり正統派のホラーだな。ちょっとアクションが多いけれど。ラストあたりは「悪魔のいけにえ2」を連想した。逆にラストは後味が悪い。ここがすこぶるホラーで、良かったと思う。