ファニーゲーム
- 出版社/メーカー: ビデオメーカー
- 発売日: 2002/05/03
- メディア: DVD
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極めて不快な映画である。
Amazonの商品説明の欄にはこう書かれている。
ある一家がバカンス先で、豹変した地元の男たちに突然皆殺しを宣告され、“ファニーゲーム”の参加者にされてしまうサスペンスホラー。
実際筋立て自体はこのようなものであっているのだけれど、問題はハネケ監督がエンタテインメントから遠く離れた演出をもって、この映画を作り上げているところだと思う。長回しの多用であったり、冒頭を除けば、ほとんど全編通して無音に近い音響効果であったりする。破綻していると捉えられかねないストーリー展開もそう。全てにおいて不穏で不敵な映画だ。
そして静かな映画である。筋立ては上に引用したもので間違いはないけれど、スリリやジェットコースター的、パーティー的、ドライブインシアター的な映画ではけっしてない。とにかく静かな映画である。上映時間は100分強。唐突な暴力にさらされる一家の姿をカメラは静かに追い続ける。
だからこそ人はこの映画に不快感を覚えるのだろうし、その不快感が暴力そのものへの感情である限り、不快さを感じることはまっとうなことなのだろうと思う。ハネケ自身も暴力の不快さを撮ったのだと言っているようだ。
淡々とした描写の中で、ほとんどジョークとも思えるような演出もあって、犯人役の一人がカメラに向かってウィンクをしたり、話しかけたりする場面がある。これは題名の通り、「ゲーム」であるということへの皮肉を意識した演出なのかなと思った。何となくだけれど、「遊びじゃないか」、「ギャグじゃん」、みたいな一言で暴力を肯定してしまうような空気への抵抗をぼくは感じた。
ハネケのいやらしい演出の他に、この映画の素晴らしいところはやはり俳優の演技だろう。子役を含めた5人の俳優は出色だ。相当細かい演出とセッションがあったのだろうなって思える。映像もそうだけれど、俳優だけでも金を払う価値はあります。知らない人ばかりなんですけど。特にでぶ役の人はすごいよ。登場してからしばらくの不穏さは異様過ぎる。
不穏さといえば、冒頭の音楽だよね。タイトルロールの色使いもあわせて、やっぱり「この映画は何かやべえ」と思わせるにじゅうぶんだ。こういうところも含めて、何だか細かいところまでがっちり作り込んでいる映画だなって思える。だからこそ、いやな映画なんですけど。ハネケの豪腕おそるべし。