唐版 銭ゲバ

 シネマヴェーラで昨日から始まった漫画・劇画原作の映画特集。今日、唐十郎主演の「銭ゲバ」が上映されたんですが、悪趣味さを徹底したような作りが今ではもう見られなくなったような手触りで良かったです。美術や衣装の色遣いや、原作よりも変な唐十郎の髪型とか。漫画原作の映画は今もよくあるけれど、いっけんして戯画されたような画面ってあまりやらないような気がします。ああ、でも今のイケメンが大勢出てくるようなドラマは意外と継承してるかも。演出が下手というか、意図的にわかりやす過ぎて退屈なので真剣に見ることはあまりないですけど。
 で「銭ゲバ」なんですけど、映画の内容よりも唐十郎が乗っ取ろうとする社長一家のキャスティングに凄味があっていい。社長に曽我廼家明蝶はいいとして、その娘二人が緑魔子と横山リエというブルジョワよりもフーテンが似合いそうなお二人の上に、お抱え運転手が岸田森(!)という一家。唐さんだからまだしも、並みの悪党だったら「まずい家にきちまった」と思ってしかるべき布陣でした。唐さんが当たり屋的に岸田森の運転する車にはねられるんですけど、そのときの岸田さんが「ダメか? ダメなのか?」と聞くのがすごいツボだった。普通「大丈夫か?」って聞くだろうし、何を期待してるんだこの人って思った(笑)。
 その岸田森さんは序盤で唐さんに殺されるんですけど、殺されるところも奇天烈な動きで目がテンになりました。ビールを飲んでいるところを灰皿で殴られるんですが、ビールをブーッって吐きながら椅子の上でぴょんと跳ねるんですよ。どんなリアクションだよ。この場面、新劇出身VSアングラ演劇的な構図でもあるんじゃないかと思うんですが(かなり上から目線の岸田さんが素敵。。。)、全部持ってかれてた。特権的肉体論も岸田さんの変すぎる動きの前には唖然とするばかり。
 でも後半、すごい派手な色のスーツを着て、金でモラルを無効にしようとする唐さんはさすがに凄味があって良かったかな。自滅の道まっしぐらっていうのも。ジョージ秋山の原作と比べるとかなり駆け足になった感じではありましたが。序盤のガチのフリークっぽい動きもなんかすごかったな。こういう書き方すると怒られそうだけど。ちょっと人形ぶりっぽいというか。どう書いていいのかわからないんですけど。その不自由さが後半はなくなっていたので、銭を視点に唐さん自身の演技プランがあったのかなとか思った。