大島渚の「儀式」

 なんか最近ぼくの中で大島渚ブームが起きていて、それはたぶんPFF2009のイベントのせいだとは思うんですけど、上映があればよし行くか!という気になります。逆に、DVD借りてまでは見る気になれないんですけど、集中力的に。映画館の暗がりが欲しい。
 ラピュタ阿佐ヶ谷武満徹特集で上映された「儀式」を観たんですが、これもおもしろくて、2時間強の上映時間があっという間だった。この映画は政治的な姿勢がかなり強いはずなんですけど、それ以上にシナリオ、というよりも描写の不条理性や出演している俳優さんたちの演技がおかしくて、結果的にある一族の年代記という娯楽作品になっていたのではないかと感じた。花嫁不在の結婚式なんか、笑いをこらえるので必死だった。いや、ぼくが見たときは場内がシーンとしてたので笑い声を上げるのははばかられた感じだったんですけど。しかしどろどろと入り組んだ人間関係はメロドラマの華ですね。
 何よりもおかしかったのは、段々と老けていく戸浦六宏さん。この映画では冠婚葬祭(=儀式)の都度、集まってくる親族が描かれるんですが、戸浦六宏さんの淡々とわかりやすく老けていく感じがおかしくて仕方なかった。あの佇まい、なんなんだろう(笑)。後半で、乙羽信子とシモい会話を交わす場面はこの映画のハイライトだったと思う。あと、歌のところかな。ステキだったー。逆に小山明子さんは眉毛潰してたりして、終始不穏な雰囲気。大島渚組の俳優さんたちは唯一無比な雰囲気を出しつつ、けっこうどんな役でもできちゃうところがすごいなー。
 あと照明が印象的でした。屋敷内の場面では、表情を削りとるような鋭い照明だったんですけど、ラスト、テルミチの死体が転がっている場面では包み込むような柔らかさがあって、そのコントラストが良かったなあ。
 いやー傑作でした。「東京戦争戦後秘話」の上映も楽しみ楽しみ。