日本の現代文学

バルガス=ジョサだのエリクソンだの上の方で書いているけれど、日本の小説も大好きなのだ。
西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」*1を読んだ。
芥川賞候補にもなったので結構有名だと思うのだけれど、どうなのだろう。
文学界新人賞受賞作をパクって表現すると、「いまどきまっとうな私小説」ということになるんだな。
文章が実に面白くて、山田詠美は読んでいて爆笑したらしく、ぼくは爆笑まではいかなかったものの、やはり何度か笑ってしまった。
主人公の台詞がいいんだな。
情けなくて、滅茶苦茶な理屈で、人間の小ささが露骨に出ているのだけれど、不快になるのではなく脱力してしまう。
語り部がその滅茶苦茶な部分を自覚していて、かなりの客観性を持っているところがまた笑える。
だからといってユーモア小説ではない。身辺雑記っていうほど、矮小でもない。
この単行本には三篇収録されていて、全部連作。まだ表題作しか読んでいない。
私小説の色彩はかなり濃い。でも読みやすいと思う、この小説は。

*1:

どうで死ぬ身の一踊り

どうで死ぬ身の一踊り